本稿では、ZENAIMより発売されているゲーミングキーボード「ZENAIM KEYBOARD」のレビューをお届けします。
製品概要 / スペック
製品名 | ZENAIM KEYBOARD |
キーレイアウト | 日本語JIS配列 / 93キー |
スイッチ方式 | 無接点磁力検知方式 |
押下圧 | 50g |
キーストローク | 1.9mm |
アクチュエーションポイント | 0.3-1.8mm |
リセットポイント | 0.2-1.7 mm |
ライティング | RGBLED バックライト(1680万色) |
チルト角 | 0°/ 4°/ 8° |
サイズ | 奥行139.2mm x 幅380.8mm x 高さ24.5mm |
接続方法 | USB(Type-C) |
重量 | 約723g |
定価 | 税込 ¥48,180 |
「ZENAIM」は、今年4月にトヨタグループ大手自動車部品メーカーである東海理化と多くの企業が共創して生まれた新たなゲーミングギアブランド。製品開発にはプロeスポーツチーム「ZETA DIVISION」の選手・ストリーマーを監修に迎え、第一作目キーボード「ZENAIM KEYBOARD」と専用ソフトウェア「ZENAIM SOFTWARE」が5月16日にリリースされました。
今回レビューするZENAIM KEYBOARDは、東海理化独自の自動車技術を応用したオリジナル磁気センサースイッチ「ZENAIM KEY SWITCH」を搭載した低背設計のロープロファイルキーボード。ガタつきを極限まで無くしたなめらかな押し心地を実現するほか、押し込みと戻りの荷重がほぼ同じに設計された独自のこだわりを実現した製品です。
開封 / 同梱品
- キーボード本体
- キープラー
- 取扱説明書
キースイッチ / キーキャップ / 配列
ZENAIM KEYBOARDのキースイッチは、東海理化が自動車部品メーカーとして培ってきた磁気センシング技術を応用し、独自開発したスイッチ「無接点磁気検知方式」が採用されています。押下耐久性は1億回以上で、接点を持たないことにより高耐久性を実現している模様です。
また、キースイッチは万が一故障した場合でも、該当スイッチのみを交換することが可能とのこと。半年から1年後を目処にキースイッチの単品販売も予定しているとのことです。
キー配列はやや特殊で、ファンクションキーが独立しておらず、数字キーとの間に隙間がない配列になっています。あまり見られないユニークな配列で、隙間がないことによりミニマルな印象を受けます。
キーキャップはややザラつきを感じるマットな質感で、独自の滑り止めコーティングが施されています。皮脂汚れも付着しづらく、長時間の使用でも汚れはあまり目立ちません。キー印字は小さめのフォントで、よりミニマルな雰囲気を引き立てています。
キーキャップの形状は限りなくフラットな形状になっています。どの部分を押しても変わらない感覚にするため、フラット形状を採用したとのこと。ただし完全なフラットではなく、正面から見た際に左右に少しだけ丸みを帯びた形状となっています。
ZENAIMの新製品発表会でお聞きした話によると、キーキャップの塗料や形状にも深いこだわりがあり、塗料を変えたものを4パターン、形状を変えたものを9パターンの計36パターンから試行錯誤を経て現在の形に落ち着いたとのこと。キーキャップ一つをとっても、快適な使用感を追求するための並々ならぬこだわりが感じられます。
打鍵感
ZENAIM KEYBOARDの打鍵感は、荷重の変化がないリニアタイプ。50gの適度な押下圧とキーのグラつきが少ないことから、独特のフィーリングを生み出しています。キーストロークは1.9mmと非常に短く、底打ち感も強めで軽快な打鍵感となっています。
打鍵音は「カタカタ」と比較的大きめで、静音性は期待できません。一方で、キーストロークの短さから高速入力がしやすく、文章入力にも適していると感じます。
また、スペースバー/エンターなどのスタビライザーが使用されているキーは、他のキーと比べて遊びが大きく、打鍵時も「カチャカチャ」と大きめの音が響きます。ただし、この問題についてはZENAIM公式が動作不良と認めており、8月を目処に改善版がリリースされるとのことです。
キーストロークについては、他のロープロファイルのキーボードと比較すると、「Logicool G913」が2.7mm、「Razer DeathStalker V2 Pro」が2.8mmとなっており、ZENAIM KEYBOARDの1.9mmは類似製品の中でも非常に短い設計となっています。
Logicool G913 / Razer DeahStalker V2 Proとの打鍵感比較
ZENAIM KEYBOARD、Logicool G913(Tactile軸、以下G913)、Razer DeahStalker V2 Pro(Red軸、以下DS V2 Pro)の3製品の打鍵感に注目し、簡単に比較してみました。
- キーストロークはZENAIMが最も短く、実際の使用上でも明確な違いあり
- 押下圧はZENAIMとG913が同じ50gだが、G913の方が若干重く感じる
- 打鍵音についてはZENAIMはカタカタと比較的大きめ。G913は比較的静か、DS V2 Proが最も静音性が高い
- 底打ち感はZENAIMは硬めのフィーリングで、しっかりとした底打ち感がある。G913は一般的な底打ち感があり、DS V2 Proは柔らかめなフィーリング
- キーのぐらつきはZENAIMが最も少ない。DS V2 Proは少なめ、G913はぐらつきが大きい
キーボード | キーストローク | アクチュエーション | 押下圧 | 静音性 | 底打ち感 |
---|---|---|---|---|---|
ZENAIM KEYBOARD | 1.9mm | 0.3-1.8mm | 50g | × | 強い |
Logicool G913(Tactile) | 2.7mm | 1.5mm | 50g | △ | 普通 |
Razer DeathStalker V2 Pro(Red) | 2.8mm | 1.2 mm | 45g | ◯ | 弱い |
チルトスタンド / 滑り止め
チルトスタンドは3段階(0°/ 4°/ 8°)で調整可能な2枚重ねタイプ。滑り止めのゴムは計6箇所に配置されていますが、本体重量が軽量なためにグリップ感はまずまずといったところ。使用中に不意に動いてしまうといった心配はなさそうです。
ケース / 接続方式
トッププレートには剛性の高いアルミ合金のフレームが採用。カラーは暖かみのある色で、Apple製品でいうと「スターライト」のような色合いです。さらさらとマットな質感で、高級感の感じられる仕上がりとなっています。
接続方式はUSB-TypeCで着脱が可能。ケーブルは布巻きタイプのものが付属しています。
また、本製品ではキーが浮いているように見える「フローティングデザイン」を採用していることも特徴の一つ。スタイリッシュな印象を与え、メンテナンスが容易なことがメリットとして挙げられます。
性能面について
ZENAIM KEYBOARDの最大の特徴は、1.9mmという非常に短いキーストローク。精密なキー操作が求められるゲームにおいては、キーストロークが短いことは大きなアドバンテージとなります。
実際にVALORANTで使用してみた所、一般的なゲーミングキーボードよりもストッピングがしやすく、より直感的な動きができるようになった印象を受けます。キーストロークの短さ、そして入力時のブレの少なさにより、直感的な動きを可能にしているものと思われます。
現時点では、Wootingのラピッドトリガー(キーを離した時点で入力が止まる機能)には及ばないものの、今後のアップデートでリセットポイントが自動可変する機能に対応予定であるとしています。
専用ソフトウェア「ZENAIM SOFTWARE」
ZENAIM KEYBOARDの設定は、専用ソフトウェア「ZENAIM SOFTWARE」にて行います。
ZENAIM SOFTWAREでは、AP/RPの設定(キー全体、もしくは個別に設定可能)をはじめ、マクロ機能やキー割り当て、キー無効化、ライティングの設定を行うことが可能です。
アクチュエーションポイント(AP:キー入力が反応する深さ)は、0.3-1.8mmの間で0.1mm間隔で調整が可能です。リセットポイント(RP:キー入力が解除される深さ)も0.2-1.7 mmの間で0.1mm間隔で調整でき、APの設定値に対して最短-0.1mmからRPの指定ができます。
「プロ設定の読み込み」という項目では、プロ選手の設定をワンクリックで読み込むことができ、簡単に同じ設定を使用することができます。現時点ではZETA DIVISION所属のcrow選手、Laz選手の設定が登録されています。
オンボードメモリも搭載されており、3つの設定を登録しておくことが可能。キーボード右上のメモリキーで簡単に切り替えることができます。
また、本ソフトウェアでは画面をキャプチャーする「キルクリップ」機能が搭載されています。キーボード右上のクリップボタンを押すと、その時点から画面録画が開始されます。最大20分まで録画が可能で、デスクトップ画面も録画可能。簡易的に画面などを録画したい場合には便利な機能です。設定画面ではクリップの長さ、ビットレート、解像度、フレームレートなどを設定できます。
ZENAIM KEYBOARD:レビュー総評
以上、ZENAIMの第一弾プロダクトとしてリリースされた「ZENAIM KEYBOARD」のレビューでした。
ZENAIM KEYBOARDは、独自開発の「無接点磁気検知方式スイッチ」採用、1.9mmの短いストローク、ミニマルで高級感のあるデザインといった特徴を持つ個性的なキーボードです。リニアで強い底打ち感を得られる打鍵感は唯一無二といっても良く、打鍵音の大きさはやや気になる点ではあるものの、ゲーム性能はもちろん、タイピングしていて楽しいキーボードだと感じました。
現時点では性能のみを追求するのであれば、Wootingといった上位機種があるため、ZENAIM KEYBOARDはベストな選択とは言えないでしょう。ただし、販売開始後から3ヶ月-半年後を目処にリセットポイントが自動で可変する機能の実装を予定しているとのことで、今後のアップデートが非常に楽しみな製品です。
追記:6月27日、キーストロークに合わせてAP/RPが自動追従する新機能「MOTION HACK」が8月中に実装予定であることが発表されました。0.1-1.7mmの有効範囲で0.05mm単位でカスタマイズが出来るとのことで、Wootingのラピッドトリガーと同等以上の機能が搭載される予定です。
価格は高めではあるものの、今後のアップデートを見越した上での性能、デザインの美しさ、手厚いサポート、さらに独自開発スイッチなどの開発コストなどを考慮すれば、十分価格に見合った製品であると感じます。
今後のアップデート次第でまた評価が変わってくる製品になりそうです。改善版が出た際には改めてレビューしたいと思います。
ZENAIM
Twitter:https://twitter.com/zenaim_official
Web:https://zenaim.com/
動作不良・販売再開について
ZENAIMは5月22日、スタビライザーが組付けられているキー(左shift、space、enter)において、連続かつ端を押すような動作を行った場合、キーが外れてしまう動作不良が判明したと発表。「該当箇所が改善されたものが出来上がるまで、今後の製品の販売を延期する」ことを決定し、2023年8月中を目安に改善し、それまで販売を延期するとしています。
さらに6月23日には上記スタビライザーの動作不良に関して、改善の目処が立ったことを発表。開発・改善を進めていく中で現行モデルを上回る改善が見込まれた箇所があり、既に販売済みのものに関しては8月中に交換対応することが発表されています。
- スタビライザーが組付けられているキー(左shift、space、enter)の動作不良改善
- コイル鳴きの音量抑制および音質による不快感の改善
- キーキャップ塗装の耐久性向上
- 背面チルトスタンドの剛性向上
販売再開日時についても8月中を予定しており、以後販売製品については上記内容をすべて初期搭載した改善版を用意しているとのこと。詳細についてはZENAIM公式Twitterで順次案内するとしています。
新機能リリースについて
6月26日、ZENAIMは「ZENAIM KEYBOARD」に関する今後のリリース・アップデート計画を発表。8月中の交換対応および販売再開をはじめ、ソフトウェア面では新機能「MOTION HACK」のリリース、AP/RPのより細かな調整機能を8月-9月にかけてリリース予定であることが明かされています。
また、10月には交換用キーキャップの販売開始、12月にはUS配列および新バージョンのキーキャップ販売、2024年2月-3月には新色のキーキャップをリリース予定であることが明かされています。
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