本稿では、SteelSeriesより発売されている「Arctis Nova Pro」および「GameDAC Gen 2」のレビューをお届けします。
製品概要 / スペック
デンマークに本拠地を置くゲーミングデバイスブランド「SteelSeries」から2022年8月に発売された、新ラインナップ「Arctis Nova」シリーズの有線モデル。従来モデルから刷新された40mmドライバーユニットを搭載し、Hi-Res認定を受けた付属の新型DACアンプ「GameDAC Gen2」が同梱します。
ドライバー | 40mm ネオディミウムドライバー |
周波数特性(ケーブル) | 10~40,000Hz |
感度 | 93dBSPL |
インピーダンス | 38Ω |
マイク | ClearCast Gen 2 – 完全格納式ブーム |
マイク周波数特性 | 100~10,000Hz |
マイク感度 | -38dBV/Pa |
マイクインピーダンス | 2200Ω |
本体重量 | 297g(実測値) |
対応プラットフォーム | PC / PS5&PS4 / Nintendo Switch / Mac |
同梱品
- ヘッドセット本体
- GameDAC Gen 2
- 3.5mm – 3.5mmオーディオケーブル – 5極 – 4極(1.2m)
- USB-C to USB-Aケーブル(1.5m)x 2
- 脱着可能なマグネット式イヤープレート x 2
- マイクロフォンポップフィルター
- 製品情報ガイド
製品外観
Arctis Nova Proは、マットな質感のブラックを基調とした落ち着いたデザインが特徴。日常生活でも違和感なく使用できそうなシックな印象を受けます。SteelSeriesのロゴをあしらったメタリック質感のスピーカープレートはマグネットタイプになっており、簡単に着脱が可能。オプションとして豊富なカラーのプレートが発売されています。
本製品のワイヤレスモデルである「Arctis Nova Pro Wireless」では、スピーカープレートにバッテリーの収納スペース/USB Type-Cポートが内蔵されていましたが、本製品では特にそういったものは見られません。
左側のイヤーカップには音量調整ダイヤル、ミュート切替スイッチ、完全格納マイクを搭載。音量調整ダイヤルはワイヤレス版とは異なり、ノッチ感のないタイプ。ボタン周りは黒で統一されており、ミニマルな印象を受けます。
デザインについては、デンマークを代表するデザイナーであるヤコブ・ワグナー氏が監修。高級オーディオブランド「Bang & Olufsen」や近年国内でも人気が高まっている腕時計ブランド「Nordgreen」の製品デザインを手掛けたことでも知られています。Bang & Olufsen社のミニマルかつ洗練されたデザインが本製品にも受け継がれています。
イヤーパッドの素材はヴィーガンレザー(合成皮革)で、サラっとしつつもしっとりとした上質な肌触り。中にはメモリーフォームのスポンジが入っており、ほどよい厚みとクッション性があります。
また、イヤーパッドは着脱が可能で、イヤーカップの切り欠き部分から引っ張ることで取り外すことができます。経年劣化しやすいイヤーパッドを簡単に取り外せるのは嬉しいポイントです。
ヘッドバンド部分は耐久性のあるスチールバンド。マット加工が施されており、質感は高めです。
ナイロン製のスキーゴーグルヘッドバンド。2箇所での位置調整が可能な上に伸縮性もあるため、高いフィット感が得られます。
音質 / 定位感
音質については、全体的にフラットな音質で低音から高音までバランスよく鳴らしてくれる印象です。低音と高音が強調されるいわゆる「ドンシャリ」タイプではなく、中音域も非常に粒立ちの良い音質。全体的に解像度がかなり高く、それぞれの音がしっかりと分離して聴こえます。
Arctis Nova Proは音の解像感に優れており、それぞれの楽器の音色も綺麗に分離して聴こえます。十分に音楽鑑賞にも利用できるレベルで、ゲーミングヘッドセットとしては非常に素晴らしい音質であると言えます。
また、定位感についても非常に優秀です。音の解像度が高いため、地面の材質による足音の違いなども明瞭に識別できます。
装着感
Arctis Nova Proの装着感は、フィット感がとても良く密閉感は強め。イヤーパッドも程よくクッション性があり、ヘッドバンドも伸縮性があるため、長時間の使用にも十分に耐えられます。ただ、密閉型なので夏場などの蒸れに関しては気になる所ではあります。
側圧に関しては個人的には若干強めといった印象。ただし、使い込んでいくと徐々に自分の頭の形に馴染んでいくため、そこまで側圧は気になりません。もしどうしても気になる場合は、何かに挟んでおいて側圧を緩めるといった方法もあります。
またワイヤレス版では、ハウジングの中央部にアクティブノイズキャンセリング用のマイクが備わっており、やや出っ張った形状となっていましたが、本製品はフラットな形状です。耳に干渉することもなく、装着感としてはこちらの方がより快適な装着感であると言えます。
重量は実測値で297g。ヘッドセットにしては一般的な重量感で、ワイヤレス版の340gと比べると一回り軽量です。
長さ調節は無段階のスライダーで3cm弱程度の幅を調整可能。スライダーは適度な硬さになっており、自身のベストポジションで維持しておくことができます。
マイク
Arctis Nova Proのマイクは、双方向ブームマイクが搭載されています。イヤーカップ部分に完全に格納することができるため、使用しない場合でも邪魔にならず使い勝手はかなり良好です。
マイクの長さは最大9cmほどで、ちょうど口の端にマイクが来るような形になります。また、マイクケーブルにワイヤーが入っているため、好みの位置に調整することが可能です。
マイク音質については、ゲインが高めで明るく聞き取りやすい音質です。特に音が籠もっている感じもなく、ゲーミングヘッドセットとしては良い方だと思います。ボイスチャット等では問題なく使用できるレベルだと思います。
GameDAC Gen 2
Arctis Nova Proには、PCやPS5、Nintendo Switchなどのゲーム機とヘッドセット本体を中継するDACアンプ「GameDAC Gen 2」が同梱されています。
「GameDAC Gen 2」はハイレゾオーディオ認定を受けた96KHz/24ビットのオーディオ解像度を実現しており、SteelSeriesのヘッドセットに限らず、様々なヘッドセット/イヤホンで使用することが可能です。
入出力ポートはUSB-Cポートx2、3.5mmジャック入力、3.5mmジャック出力となっており、PCとPlayStationなどを双方を接続し、使用タイミングで簡単に切り替えることが可能です。
GameDAC Gen 2の本体ディスプレイには電池残量やボリュームなど、様々な情報が表示されるほか、アンプ本体からイコライザー調整やゲーム音とチャット音のバランス調整、接続先の切替など様々な設定ができます(ソフトウェア上でも設定可能)。
また、GameDAC Gen 2は単体でも発売されており、執筆時点では18,000円前後で販売されています。
ソフトウェア
SteelSeries GG:Engine
Arctis Nova Pro本体の設定は、SteelSeriesが開発した統合ソフトウェア「SteelSeries GG」に同梱されている「Engine」という項目から設定可能です。
アプリ左側のタブから「Engine」→「機材」と進み、該当のデバイスを選択すると設定画面が開きます。
Engineの設定画面では、イコライザーやマイク音量の調整、さらにベースステーションに関する各種設定を行うことができます。基本的にこちらの設定はGameDAC側でも行うことも可能です。
SteelSeries GG:Sonar
先ほどのEngineと同じくSteelSeries GGに同梱されている「Sonar」は、同社が開発するPC用オーディオソフトウェア。このソフトが実はかなり優秀で、ゲーング初を謳うプログレードのパラメトリックEQをはじめ、それぞれ独立したオーディオミキサー機能を搭載しています。
Sonarにはゲーミング、チャット、MEDIA、マイクの4種類の仮想オーディオの入出力ソースが用意されており、各項目ごとにボリュームやイコライザーの調整が可能な上、複数のプラットフォームでそれぞれを独立したデバイスとして設定可能。例えばDiscordでは「チャット」を、ゲームでは「ゲーミング」を接続し、それぞれ個別にイコライザーの設定やボリューム調整などを行うといったことも可能です。
さらに、SonarではEngineよりも細かなイコライザー調整ができるほか、Apex LegendsやOverwatch 2など各種ゲームに最適化されたEQプリセットが数多く用意されています。
もちろんVALORANTにも対応しており、VALORANTの海外プロであるbabybay選手がチューニングした専用プリセットが用意されています。SteelSeries公式サイトによると、VALORANT用のプリセットは足音がより強調され、スパイクの効果音や定位感がより向上するとしています。その他にも、没入感のあるサラウンド音声を再現する「360 Spatial Audio」なども搭載しています。
SteelSeries Arctis Nova Pro / GameDAC Gen 2:レビュー総評
以上、「Arctis Nova Pro」および「GameDAC Gen 2」のレビューでした。
「Arctis Nova Pro」は、音質の良さ、抜群のフィット感というヘッドホンとしての基本的な性能に加え、ソフトウェア面においても非常に優れている製品であると感じます。またデザイン性もよく、Bang & Olufsen社の製品を手掛けたことでも知られるヤコブ・ワグナー氏が監修していることから、他社の追随を許さないミニマルで上質なデザインに仕上がっています。
機能面ではANC機能や外音取り込み機能を搭載し、低遅延の2.4GHz/Bluetoothの2方式に対応したワイヤレス版モデル「Arctis Nova Pro Wireless」の下位互換にあたるものの、無線接続が不要ということであれば本製品でも十分な満足感が得られると思います。
ゲーミング製品らしからぬシックなデザイン、高い解像感を誇る音質は現状唯一無二の製品であると言えるでしょう。上位機種である「Arctis Nova Pro Wireless」もワイヤレス接続に対応しており、使い勝手は抜群です。こちらもぜひ検討してみてはいかがでしょうか。
SteelSeries Arctis Nova Proの特徴
- ゲーミングデバイスらしからぬ、B&Oブランドを彷彿とさせるようなシックなデザイン
- 解像感の高い音質で音楽鑑賞にも◎、定位感も良好
- 抜群のフィット感で遮音性が高め
- マイク音質はゲインが高めで聞き取りやすい音質、完全格納式で邪魔にならない
- ヘッドバンド、イヤーパッドが着脱可能(別カラーも個別販売)
- イヤーパッドが着脱可能。単体販売もしており、劣化した際に交換可能
- オーディオソフトウェア「Sonar」がとにかく優秀
SteelSeries Arctis Nova Proの短所
- 側圧が若干強め
- 密閉型のため、夏場は蒸れが気になる
SteelSeries
https://jp.steelseries.com/
https://twitter.com/SteelSeriesJP
コメント