本稿では、Razerから発売されているワイヤレスゲーミングヘッドセット「BlackShark V3 Pro」をレビューします。
製品スペック

製品名 | BlackShark V3 Pro | BlackShark V3 | BlackShark V2 Pro |
---|---|---|---|
ドライバー | 第2世代 Razer TriForce バイオセルロース 50mmドライバー | 第2世代 Razer TriForceチタン50mmドライバー | Razer TriForceチタン50mmドライバー |
周波数特性 | 12Hz~28kHz | 12Hz~28KHz | 12Hz~28KHz |
インピーダンス | 38Ω | 32Ω | 32Ω |
感度 | 100dBSPL/mW | 106dBSPL/mW | 100dBSPL/mW |
マイク | Razer HyperClear フルバンド12mmマイク | Razer HyperClear 超広帯域9.9mmマイク | Razer HyperClear スーパーカーディオイド9.9mmマイク |
マイク周波数特性 | 100Hz~10kHz | 60Hz~16KHz | 100 Hz~10 kHz |
マイク感度 | -42±3dBV/Pa | -42±3dBV/Pa | -42±3dBV/Pa |
ピックアップパターン | 単一指向性 | 単一指向性 | 単一指向性 |
接続 | 2.4GHzワイヤレス Bluetooth 5.3 有線接続(USB-Aまたは3.5mm) | 2.4GHzワイヤレス Bluetooth 5.3 有線接続(USB-A) | 2.4GHzワイヤレス 有線接続(USB-Aまたは3.5mm) |
Bluetoothコーデック | AAC、SBC | AAC、SBC | – |
バッテリー寿命 | 最大70時間 (2.4GHz接続) | 最大70時間 (2.4GHz接続) | 最大70時間 |
本体重量 | 367g | 270g | 320g |


開封|同梱品






同梱品



製品概要 / デザイン
Razer BlackSharkシリーズは2012年に初代が登場して以来、eスポーツシーンを中心に多くの支持を集めてきた人気ヘッドセットシリーズ。初代から10年以上を経て、2025年8月に最新モデルのBlackShark V3 Proが新発売されました。

今回のV3 Proでは、新たに「第2世代 Razer TriForce バイオセルロース50mmドライバー」を採用し、音質面で大幅な進化を遂げています。さらに、ワイヤレス技術には最大10msの超低遅延を実現する「第2世代 Razer HyperSpeed Wireless」を導入。加えて、マイクには取り外し可能なRazer HyperClear フルバンド12mmを搭載し、従来のモデルでは考えられなかったほどクリアで明瞭な音声を実現しています。

また、BlackSharkシリーズ初のハイブリッド型ANC(アクティブノイズキャンセリング)を搭載。左右のイヤーカップに合計4基のマイクを内蔵し、周囲の騒音を効果的に抑制。回転式イヤーカップと厚みのあるメモリーフォームクッションが相まって、遮音性と快適性を両立しています。


左側のイヤーカップには、音量調整ダイヤル、USB Type-Cポート、電源ボタン、ステータスインジケーター、マイクミュート切替ボタンが搭載されています。操作系が一箇所にまとまっているため、直感的に扱えるのが特徴です。
特に改善点として、旧モデルのBlackShark V2 Proではマイクミュートの切替時にOn/Offの状態が分かりにくいという欠点がありましたが、V3 Proでは切替時に「ピコッ」と効果音が鳴る仕様になり、現在の状態を即座に把握できるようになっています。


左イヤーカップには、ANC切替ボタン、ゲーム/チャットバランスホイール、SmartSwitchボタンが搭載されています。SmartSwitchボタンでは、イコライザープリセットや2.4GHz / Bluetoothモード、同時オーディオモードなどを簡単に切り替えることができます。
右イヤーカップには、ANC切替ボタン、ゲーム/チャットバランスホイール、SmartSwitchボタンが搭載されています。操作系統が左右に分かれているため、直感的に使い分けられる点が特徴です。
特にSmartSwitchボタンは利便性が高く、イコライザープリセットの切替や、2.4GHz/Bluetoothモードの変更、同時オーディオモードの有効化などをワンタッチ(ペアリングは長押し、切替は2回押し)で行うことが可能です。これにより、複数デバイスを行き来する場面や、シーンに応じたサウンド調整が必要な場面でもスムーズに操作できます。

また、イヤーカップのフェイスプレートはマグネット式で簡単に着脱可能となっています。

今後はプロチームのロゴをデザインしたフェイスプレートが登場予定とされており、好みに合わせて外観をパーソナライズできる点もV3 Proならではの魅力といえるでしょう。

装着感
イヤーカップは、遮音性に優れたレザーレット素材と、通気性・吸湿性に優れたファブリック素材を組み合わせた2層構造が採用されています。外側はしっかりと音を遮断しつつ、内側は蒸れを防ぎ快適さを保つ設計で、長時間の使用でも不快感が少ないのが特徴です。
手触りはさらりとしたファブリックの質感があり、肌に触れてもベタつきにくく快適。さらにイヤーパッドは2cm以上の厚みがあり、耳を包み込むことで圧迫感を軽減します。そのため、長時間のゲームプレイやリスニングでも耳が痛くなりにくく、快適さを維持できるデザインに仕上がっています。

また、本製品ではイヤーカップが回転するスイベル機構を新たに採用しています。旧モデルのV2 Proにはこの機構が搭載されていなかったため、角度によってはフィット感にばらつきがありました。しかし、V3 Proでは耳の角度や頭の形に合わせて柔軟に調整できるようになり、より幅広いユーザーに対応できる設計となっています。
動きも非常にスムーズで、装着時には自然に顔のラインに沿って動いてくれるため、違和感が少なく長時間使用しても快適です。

長さ調整は最大約3cmまで伸ばすことができ、頭が大きめの方でも余裕を持って装着できる仕様になっています。



重量は約367gと、数値だけを見ると軽量とは言えません。しかし、参考までにAirPods Maxが約386gであることを考えれば十分に実用的な範囲です。加えて、優れたフィット感のおかげで装着時には数値以上に軽く感じられ、長時間のゲームやリスニングでも快適に使用することができます。
ヘッドバンドは外側にレザーレット素材、内側にファブリック素材を組み合わせた構造になっています。適度な通気性を保ちながら、外観は高級感のある仕上がりです。内部には比較的厚みのあるクッションが仕込まれており、頭頂部への荷重をしっかりと分散してくれます。長時間の使用でも痛みや圧迫感を感じにくい設計となっています。

この点については、旧モデルのBlackShark V2 Proでも十分なクッション性があり、V3 Proで大きな変化は見られません。ただし、全体的なフィット感の改善やイヤーカップの回転機構の導入と相まって、総合的な装着性は確実に向上している印象です。
音質
BlackShark V3 Proはドライバーサイズこそ従来と同じ50mmですが、内部構造を刷新し、第2世代 Razer TriForce バイオセルロースドライバーを新たに採用しています。これにより高調波歪みが従来比で約50%低減され、より鮮明でクリアな音質を実現しました。
さらに、新設計のドライバープラグによって音の分離感も大幅に向上。一つ一つの音がより明瞭に聞き分けられるようになり、特にゲームプレイ時の定位感(音の方向感や距離感)を把握しやすくなっています。旧モデルではやや混ざって聴こえていた細かな音も、V3 Proでは輪郭がはっきりと感じられるようになりました。

旧モデルのV2 Proと比べると、音質面では明確な進化が感じられます。まず、音の厚みと繊細さが増したことで、表現力が格段に向上。V2 Proでは音にノイズっぽさを感じることがありましたが、V3 Proではそうした要素が一切なくなり、細部のディテールまで鮮明に聴き取れるようになりました。ボーカルの息遣いまでリアルに再現され、音質の違いは一聴して分かるほどです。
また、高音域の刺さりが改善され、クリアで明瞭ながらも丸みのあるサウンドとなりました。低音から高音までバランス良く鳴り、音の分離感も向上しています。V2 Proでは耳元で音が鳴っているような音の圧迫感がありましたが、V3 Proではより奥行きのある広がりと深みを感じられるようになった印象です。

ゲーム用途では、この分離感と粒立ちの良さがより強く感じられます。V2 Proではやや曇っていた小さな音も、V3 Proでは粒が立って聞こえ、足音や遠方の銃声などが一段と認識しやすくなりました。定位感も非常に優秀で、音の方向や距離を正確に掴みやすくなっています。もちろん、遅延も一切感じられず、有線と同じ感覚で使用することができます。
さらに、PC使用時には「THX SPATIAL AUDIO 7.1.4」に対応。7つのイヤーチャンネル+1つの低音ライン+4つのオーバーヘッドチャンネルを再現し、臨場感のある空間オーディオを楽しめます。有効化すると音場が大きく広がり、定位感がさらに明確になりますが、一方で銃声の反響など不要な情報まで強調されるため、クリアな音声を好むユーザーにはステレオ利用の方が向いているように思います。
総じて、BlackShark V3 Proはゲーミングヘッドセットとして非常に高音質にまとまっており、リスニング用途の純粋なオーディオヘッドホンと比べれば及ばない部分はあるものの、ゲーム用途ではトップクラスの音質を実現していると感じます。特に旧モデルとの違いは歴然で、装着感や音質など、あらゆる面でアップグレードしています。
マイク音質

マイクは、従来のV2 Proが9.9mmカプセルだったのに対し、V3 Proでは12mmの大型カプセルを採用しています。これにより収音性能が向上し、実際の音質も大幅に改善されました。

特にV2 Pro(通常版)では、こもったような音で明瞭さに欠ける場面がありましたが、V3 Proではそれが解消され、ゲーミングヘッドセットのマイクとは思えないほどクリアで自然な音声を実現しています。発声の輪郭がはっきりしているため、ボイスチャットではもちろん、配信やオンライン会議でも安心して使えるレベルです。
もちろん、専用のダイナミックマイクやコンデンサーマイクと比べると解像度や表現力では及びません。しかし、ヘッドセット付属マイクとしてはトップクラスの性能であり、配信用途でも十分実用的だと感じます。

接続方式
接続方式は2.4GHzワイヤレス、Bluetooth 5.3(AAC / SBC)、有線接続(USB-Aまたは3.5mm)に対応。特に注目すべきは2.4GHzとBluetoothの同時接続が可能な点で、これは他社製品にはあまり見られない大きな強みです。

たとえばPCでは2.4GHz接続で低遅延のゲームプレイを楽しみつつ、同時にスマートフォンの通話や音楽をBluetooth経由で受け取ることが可能です。ヘッドセットをつけ替えたり接続を切り替えたりする必要がなく、プレイを中断することなくシームレスに利用できるのは大きな魅力です。
また、スマートフォン向けには専用アプリ「Razer Audio」(iOS / Android)が提供されています。このアプリを使えば、スマートフォンからでもイコライザー設定や音質調整など一部機能を直接操作することが可能です。PCでの細かな設定に加え、外出先やモバイル環境でも簡単に調整できるため、利用シーンを問わず柔軟にカスタマイズできる点は大きな魅力といえるでしょう。
ANC / 環境認識(外音取り込み)
ANC(アクティブノイズキャンセリング)は4段階で調整可能となっており、用途や環境に合わせて細かく切り替えられます。最も強力なレベル4では、低音域のノイズはしっかり抑えてくれる印象ですが、高音域についてはやや効果が限定的です。それでも、ANC特有の圧迫感や耳が詰まるような不快感は少なく、自然な感覚で程よく雑音を軽減してくれる点は好印象です。
一方で環境認識(外音取り込み)機能については、外音を適度に拾ってくれる程度で、AirPods Proなどの外音取り込み特化モデルのような強力さは感じられません。会話や周囲の物音をある程度確認できるレベルにとどまり、過度な期待はしないほうが良いでしょう。
イコライザー / ソフトウェア
BlackShark V3 Proは、専用ソフトウェアRazer Synapseを通じて柔軟なカスタマイズが可能です。最大9つのイコライザープリセットを設定でき、右イヤーカップに搭載されたボタンからワンタッチで切り替え可能。切替時には音声アナウンスが流れるため、現在どのプリセットが有効になっているのか直感的に把握できます。

初期状態では「デフォルト」「ゲーム」「映画」「音楽」といった汎用的な4種類のEQプリセットが用意されています。加えて、VALORANT、Counter-Strike 2、Apex Legendsなど人気FPSに特化したプリセットも収録(現時点で6つのFPSタイトル向けを用意)。さらにプロプレイヤーが監修したチューニングも複数用意されており、実際に試すと音の傾向が大きく変化し、ゲームプレイに最適化されていることが実感できました。プリセットをベースに、自分好みに細かく調整することも可能です。


エンハンスメントのタブでは、超低レイテンシー(デフォルト有効)、ANCの調整、デュアル接続時(2.4GHz+Bluetooth)の動作切替、さらに足音や小声を強調する「オーディオ強化」、低音ブースト、音声明瞭度向上などを設定できます。

マイクのタブでは、入力感度の調整やマイクテスト、モニタリング機能(0-15段階)によるリアルタイム確認、音声強調やマイクEQの調整が可能です。特にマイクモニタリングは、ヘッドセット特有の“自分の声がこもる感覚”を軽減してくれるため、ヘッドセット使用に違和感を感じるユーザーでも自然に会話することが可能です。

電源のタブでは、ドングルのLEDインジケーターの挙動やパワーセービング機能の設定ができます。

Razer BlackShark V3 Pro|総評
Razer BlackShark V3 Proは、従来モデルの魅力を継承しつつ、音質・装着感・マイク性能・機能性のすべてを刷新したシリーズの集大成ともいえるフラグシップヘッドセットです。
第2世代 TriForce バイオセルロース50mmドライバーの採用により、音の厚みや繊細さが格段に向上し、高音域の刺さりも改善。ゲームでは定位感と分離感がさらに高まり、競技FPSに直結する性能強化を体感できます。加えて、12mmの大型マイクは付属マイクとは思えないほどのクリアさを備え、配信用途にも十分対応可能。ANCやSmartSwitchなどの新機能や回転式イヤーカップの採用によって、利便性や装着感も飛躍的に進化しました。

ソフトウェア面では、最大9つのEQプリセットやプロゲーマー監修の設定をワンタッチで切り替え可能。用途やタイトルに合わせて自在に音質を最適化できる点も大きな魅力です。唯一の弱点を挙げるとすれば重量が約367gとやや重めなことですが、優れたフィット感のおかげで実際の使用感は数値以上に軽く感じられます。

販売価格はAmazonで40,780円(本稿執筆時点)と高価格帯に属しますが、その進化した音質・マイク性能・装着感・機能性を考えれば十分に納得できる内容です。筆者自身、長年BlackShark V2 Proを愛用しており、その耐久性と信頼性には実績があります。V3 Proはそこからさらに進化したモデルであり、長期的に安心して使えるヘッドセットといえるでしょう。

総じて、高音質・高機能・高い信頼性を兼ね備えたRazer BlackShark V3 Proは、競技シーンはもちろん日常利用にも対応できる完成度の高い一台だと感じます。FPSプレイヤーや配信者、そして次世代のゲーミングヘッドセットを探しているすべてのユーザーに、自信を持っておすすめできる製品です。

